昔からのことわざによると、鳥は単純で記憶力が劣る存在と描かれることがあります。
例えば、「3歩で忘れる鳥頭」とか、「鶏は3歩歩けば忘れる」といった言葉です。
しかし、実際には、鳥たちはとても知的であり、感情豊かな生き物です。なぜ、このような素晴らしい生き物が、単純で頭の悪いイメージと結びつけられてしまったのでしょうか。
その背景には、古くからの誤解や文化があると考えられます。
この記事では、鳥たちの素晴らしい魅力を再発見し、尊敬と愛情を深く理解していただくことを目指しています。
最後までお付き合いいただき、鳥たちの世界を一緒に探求していきましょう。
すべて読み終えるころには、鳥沼にハマってしまうかもしれません。
鳥の小さな脳に隠された驚くべき能力
鳥の小さな脳は、私たちが想像する以上に驚くべき能力を秘めています。
鳥の知能が低いと誤解されてきた理由
誤解ポイントその① 大きさ神話
なぜか私たち人間は、小さい生きものたちはあまり頭が良くないと思いがちです。高度な知能を持つには、最低でもある程度の大きさが必要だと信じているのかもしれません。
しかし、それは間違いです。体の小さい鳥にも、驚くべき能力が備わっていることに気付く機会を奪っていたのは、鳥の知的な側面を見逃していたからなのです。
体の小さい鳥に知的な意識はないだろうという思い込みが、鳥の驚くべき能力に気づく機会を遠ざけていたのかもしれませんね。
誤解ポイントその② 大脳皮質の大きさ
神経科学や心理学などの分野で、活発に研究が行われている大脳皮質。脳の外側にある灰白質の層で、知的機能や感覚処理、運動制御など、多くの重要な機能を担っています。
高度な知的機能を制御していて、言語、記憶、学習、意思決定など、人間の高次の認知機能は大脳皮質によって調節されています。
人間らしくいるために欠かせない脳の場所なんですね。
人類はこの大脳皮質を最も発達させてきました。それに対し鳥の大脳皮質はとても小さいことから、鳥にはごく僅かな知能しかないと考えられていたのです。
人類は大脳皮質を発達させ、手を使って道具を作り操作し、物や概念などを象徴的に使用する特殊能力を生み出しました。
鳥類は高線条体1 を発達させ、道具を使わない飛行能力をはじめとする特殊能力を生み出しました。
鳥の高線条体が大きくなったのは、人類の大脳皮質が大きくなったのと同じことだったのです。
知能には色々な種類がある
ヒトの物差しで知能を測ろうとすれば、簡単な算数の問題を解くことができない鳥は知能が低いことになります。
ですが、鳥の物差しで測ってみたら、飛ぶこともできず、地図やナビゲーションシステムがなくては目的地にたどり着くことも、離れた地から帰ってくることもままならないヒトの知能は高いと言えるでしょうか。
極度の方向音痴である私は、鳩の優れた帰巣の能力には、到底及びません。
このように、知能には様なざまな種類があり、ヒト特有の知能もあれば、鳥特有の知能もあります。そして、ヒトと鳥に共通する知能ものもあるのです。
以下は、ヒトと鳥に共通する能力です。
人類と鳥類に共通して見られる知能
- 音楽的知能
- 社会的知能
- 身体・筋肉的知能
- 空間的知能
メスの気を引こうと一生懸命ラブソングを奏でたり、ダンスしたりプレゼントしたり、見事な豪邸を建てる鳥もいます。なんてロマンティックなんでしょう。。。
鳥類と人類の本能的な部分
鳥と人類が持つ本能
鳥類
鳥は空を飛び、鳥類のスタイルでつがいになり、それぞれの種に特徴的な鳴き声と身体言語を使って、自らの意思を伝える本能を持っています。
人類
ヒトは二足歩行をして、ヒトのスタイルでつがいになり、ヒトの音声言語と身体言語を使って、自らの意思を伝える本能を持っています。
本能的な航行と本能的な言語
鳥類
鳥の幼鳥は、自然界に存在する情報に注意を集中し、それらを学び練習し使うことで、自らの航行本能の不足を補います。
人類
ヒトの幼児は、自分が耳にする単語や文法に注意を向け、それらを学び練習し使うことで、自らの言語本能の不足を補います。
喃語プログラムとぐぜり
ヒトの幼児の本能的な喃語プログラム2は、鳥類の本能的な鳴き声プログラムぐぜり 3に似ています!
ヒトの赤ちゃんが、生まれてすぐにお乳を飲めるのも、鳥の雛が大きく口を開けてごはんをせがむ様に鳴くのも同じ本能なんですよ。
鳥と人類の変わらない能力
これまでお伝えしてきたことをまとめると、ヒトと鳥は同じように本能的で、同じように知的であるということがわかりました。その知性の範囲や表現が、鳥とヒトで異なるというだけのことだったのです。
それぞれが異なる環境や、生活様式に適応して進化してきたから、高度な知能の使い道が違っただけということですね!
家禽に知能や感情があったら煩わしい
生産効率を上げるためには、1羽1羽大切に愛情をかけて育てるのは、とても難しいことだと想像ができます。
狩猟していた時代は、必要な分だけ狩りをするスタイルでしたが、時代が進み産業革命が起こると、狩猟から、より安定的に食料を供給できる、家畜や家禽というスタイルへと時代は変化していきます。
西洋科学技術文化に見られる特徴
人類が誕生する前、地球は、数億年もの間地球上の生態系のバランスを保ってきました。ところが、産業革命以降このバランスが崩れていきます。
西洋科学技術文化の特徴の一つに、「技術革新と産業化」というものがありますが、科学的知識を基にした技術革新と産業化が盛んに行われ、産業革命以降、機械化、工業化が急速に進展し、生活や経済のあり方に大きな変革をもたらしました。
それは、食品産業も例外ではありません。
食料の安定供給と生産の効率化
食肉と卵を得る目的で育てられる、ニワトリやシチメンチョウに対して、飼い主や取扱業者は、知能や感情をほとんど持たない存在として見なさなければならないことが多いようです。
食肉にするためこれから潰そうとする生きものに、もし恐怖や痛みの感情があったらとしたら...。これからの自分の運命に絶望し、死んでいく仲間を想い悲しむ感情があることを知ってしまったとしたら...。その生きものたちを殺めることができるでしょうか。
利己的な品種改良
食料供給の安定性や品質向上、効率化を目指し、食用の生き物たちの餌や交配を管理してきました。更なる効率化を行う中で、早く大きく成長し、肉が多く、骨が軽量で扱いやすく、最低限の知能しか持たないように品種改良をしてきたのです。
最後に
今回は、鳥たちが忘れっぽいという誤解がどのように生まれたかを解説しました。
鳥たちも私たちと同じく豊かな感情を持ち、意識が存在していることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
私たちは地球上の種の一つに過ぎません。
鳥や他の生物も、私たちと同じように驚くべき自覚と意識を持っています。この事実に気づくことで、身近な生き物に優しい気持ちで接することができます。
そして、私たちが地球上の全ての生きものと調和して共存する世界が実現することを心から願っています。
【参考文献】セオドア・ゼノフォン・バーバー.もの思う鳥たち.1版,株式会社日本教文社,2008,336P
もの思う鳥たち: 鳥類の知られざる人間性 (いのちと環境ライブラリー) 単行本 – 2008/6/2
セオドア・ゼノフォン バーバー (著), Theodore Xenophon Barber (原名), 笠原 敏雄 (翻訳)
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